病気

慢性リンパ性白血病

皆様いかがお過ごしでしょうか?

今回は、私が治療させていただいている17歳のミックス犬の女の子が慢性リンパ性白血病(以下CLLと略します)を患っており、その経過も踏まえて紹介させてください!


CLLとは〜

血液のがんの1つであり、主に血液成分を作る骨髄の中で成熟したリンパ球ががん化したもので、多くは進行が緩やかとなっています。健康診断などで偶然見つかるケースも報告されています。

犬のCLLにはT細胞型、B細胞型、および異常な免疫学的表現型があり、特にT細胞型が多いと言われています。全生存期間の中央値はT細胞型で930日、B細胞型で480日、異常な免疫学的表現型で22日との報告があります。

〜症状〜

多くは無症状ですが、進行すると食欲低下、元気消失、下痢、リンパ節が腫れるなどが起こってきます。体重が落ちてくることもあるので注意しましょう。

 

◯今回の経過

この症例では、来院初期は気管虚脱を伴った呼吸困難とチアノーゼ(舌色が紫色になること)が症状として出ていました。血液検査にてリンパ球の異常増殖、顕微鏡にて成熟リンパ球が多量に認められました。その後、鎮咳薬や気管支拡張薬を使いながら治療を行ったが明らかな症状の改善は認められず、リンパ球数は増加傾向でした。

そこでまずはステロイドの投薬を開始しました。症状は改善されましたがリンパ球は増加する一方…、少し元気になったタイミングで副作用の報告が少ない抗がん剤の1つであるクロラムブシルを開始しました。するとリンパ球が正常値まで下がり、症状も改善されたままであったので現在はステロイド、クロラムブシル共に休薬しています。そのまま再発もなく今はとても元気にしてくれています!

 

この症例では、わんちゃんが状態としてかなり危険な状況から、飼い主様と共に相談しながら時に抗がん剤の使用を決断していただけたことが今の結果につながったと思います。

 

これからも同じように飼い主様に寄り添っていけるような獣医師を目指して新年度を迎えていきたいと思いました。

獣医師 日向野