病気

ネコの高血圧症

みなさんこんにちは!今回は、久々に私事ではなく、獣医学のお話、サイレントキラー:ネコの全身性高血圧症についてお話します。

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まず、高血圧症とは、持続的に体血圧が上昇している状態をいい、収縮期血圧が160mmHg以上で高血圧とされています。

高血圧の原因は、以下のように分類されます。
状況高血圧:病院内などで興奮や不安により自律神経が刺激されて生じる一時的な高血圧
二次性高血圧:特定の背景疾患の罹患や薬物、物質の摂取により高血圧が引き起こされているもの。

例)慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症、糖尿病など

特発性高血圧:特定できる基礎疾患がないのにも関わらず高血圧が持続すること。高血圧の猫の約13~20%と言われています。

また、ネコちゃんは高齢になるにしたがって徐々に血圧が上昇するとされており、高齢のネコちゃんでは100日あたり約0.4mmHg上昇するとの報告があります。

ここからは診断のお話ですが、重度な高血圧にならないとわかりにくい!というのがこの病気の注意したいところになり、やっかいなところです。
高血圧を疑う状況としては、腎臓病の進行(腎数値の上昇、蛋白尿など)、眼の異常(眼底・前房出血、網膜剥離など)脳神経異常(痙攣、意識障害など)、心臓の異常(心雑音、不整脈、うっ血性左心不全など)などがあります。
これらの異常は、TOD(標的臓器障害)とされ、高血圧によって引き起こされるものとして評価されます。

しかしながら逆に言うと、上記の異常が診断されたときにはじめて高血圧を疑うことになるのです。これらの病気を疑う状況にならないうちは診断が難しい、とも言えます。高血圧症が通称サイレントキラーと呼ばれる所以です。

特に腎臓病については、高血圧の原因にもなり、結果として悪化する場合もあり、「卵が先か鶏が先か」問題になるので因果関係がわかりにくいことがあります。見逃しを防ぐために、僕の診察では、腎臓病を疑うネコちゃんでは、基本的に全頭で血圧測定を実施しています。(その子の性格によってはどうしても実施できない場合もあります。)

治療法は、降圧剤の飲み薬を継続的に飲んでいただくことになります。二次性高血圧の場合は、原因疾患を治療、管理することである程度高血圧が解消される場合があります。

無症状の間は発見されにくいこの病気ですが、腎臓病は特にネコちゃんで多い病気です。少しでも長く健康に生きてもらうためにも、まずは定期健診からおすすめします。とは言いつつも、病院に来て血圧測って、採血して、超音波検査して、というのはなかなかハードルが高いのも事実です。なので、定期的な血液検査から始めてみて、腎臓の数値の上昇があったらついでに血圧も測ってみる、ここから始めてみることが予防、早期発見につながるのでぜひおすすめします。

獣医師 木村