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歯肉炎?歯周病?歯槽膿漏?

今月は、歯周病がかなり進行して口腔環境が悪かったわんちゃんの歯科処置をさせていただいたので、紹介します。

 

そもそも歯周病とは、歯についた歯垢内で細菌が繁殖していき、最終的には顎の骨を溶かしていく病態を示します。

 

歯肉炎?歯周炎?歯周病?歯槽膿漏?いくつかの紛らわしい言葉があるので、一旦整理すると、

 

歯肉炎:歯肉のみが炎症を起こした状態。

歯周炎:歯肉の炎症に加えて、歯槽骨や歯根膜といった骨が溶け始めた状態。

歯周病(中程度の歯周炎):歯周炎がさらに進んで、歯がぐらつき始めた状態

歯槽膿漏(重度な歯周炎):歯根がむき出しになってしまい、歯が抜け落ちるほどになった状態

 

というように、それぞれの言葉は歯周炎の重症度で使い分けされる言葉であり、案外近しい意味を持ちます。

 

では実際に、どの程度ならどこまでの歯科処置が必要なのかというお話に移りたいと思います。

 

まず、歯肉炎の段階であれば、歯はまだ溶けてないので、超音波の力を用いた歯石除去の機械を用いて歯石や歯垢を除去します。これが、歯周病に対する予防的な処置:スケーリングといいます。当院でも、定期的なスケーリング処置を推奨しています。わんちゃんの生涯のうち5歳以上になったら、もちろんその子の日頃のデンタルケアの程度にもよりますが、おおよそ2~3年おきに3回できたら理想です。

 

次に、歯周炎~歯周病まで進行してしまい、歯周ポケットが深い、すでに歯がぐらついている状態の場合は、スケーリングだけでは不十分なので、それらの歯は抜歯する必要があります。この状態の子に対する歯科処置は、病気の予防ではなく、治療という立ち位置に変わります。

 

では、今回の症例を例に紹介させていただくと、

施術前がこんな感じ!

 

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もともとが保護犬ちゃんだったりすると、なかなか日頃のデンタルケアが行き届いていない子もいるので、これくらい汚れてしまうことも決して稀ではありません。

歯石・歯垢が重度に付着しているのがわかると思います。

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こちらが施術後です。まずはがっちり付着した歯石を専用の器具で破砕していき、歯本体を露出させます。この時点でぐらついてる歯や歯周ポケットが深い歯は抜歯します。

あとは、まだ機能している歯、つまり歯肉炎でとどまっている、もしくは軽度な歯周炎のみの歯に対しては、スケーリング処置をしました。

 

ほとんどの歯を抜歯したので、残せた歯も少なかったのですが、歯周病になった歯を残すと、全身の感染症に発展する可能性もあり、実はわんちゃんはフードも丸のみできることがほとんどなので、抜いてしまうメリットの方が大きいことになります。

 

歯周炎が進行しているサインとしては、やはり口臭が気になることや、歯磨きでの出血が増えた、硬いものを食べると痛そう、食べにくそうなど、さら進むとほっぺたが腫れてくることもあります。

 

もし、一緒に暮らしているワンちゃんこれらに心当たりがある場合は、ぜひぜひご相談ください。

 

獣医師 木村