なかなか治らない頑固な下痢について
今回は、慢性の下痢についてお話します。
ワンちゃんやネコちゃんの下痢の症状は、来院される患者さんの中でも特に多い症状なのではないかと思います。
下痢には、大きく2通りの分類があり、それらをヒントに私たちは治療方針を決定していきます。
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ひとつは、「小腸性」か「大腸性」になります。
これらの鑑別は、主に以下の表で整理することができます。
これらの情報と、糞便検査を主な診断材料にして、適切な治療を選択していきます。
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2つ目が、「急性」か「慢性」か、になります。
おおよそ3週間以上の下痢が続くと、「慢性下痢」の状態であると判断します。
下痢に治療を加えて1週間くらいたつと、ほとんどの下痢症状は改善が見られます。しかし、中にはいくら下痢止めを使っても、炎症を抑えても改善がみられないケースがあります。その状態が3週間続いた時点で、次は「慢性下痢」としての治療が必要になります。
では、どんな治療を加えていけばいいでしょうか。実は、ここからが難しい!!
診断の基本は除外診断と診断的治療になります。
まずは、感染性(寄生虫や細菌感染)や内分泌疾患などを除外したいので、
- 下痢パネル
- 血液検査
- 画像検査(X線、超音波検査)
で異常な所見がないか確認が必要です。
しかし、
「確かにうちの子は下痢はしてるけど、食欲も元気もあるのにそんなに検査するの??」
と思われる方も多いのではないでしょうか。
確かに、検査費用なども考えると現実的ではない場合も多いので、以下の治療を同時進行で行うことが多いです。
それは、食事療法です。大きく3つのタイプの食事に分けてひとつずつトライしていき、どの食事に反応するか(下痢が改善するか)を見ていきます。
- 低アレルゲン食(新奇タンパク食、加水分解食、アミノ酸食)のうち2種類
- 高繊維食
- 高消化性食
ワンちゃんの場合は、おおよそ1週間、ネコちゃんの場合は2~3週間で効果が出てくるといわれています。
実は、食事だけでは改善が見込めない「抗菌薬反応性腸症」や「免疫抑制薬反応性腸症」など、他の疾患も存在するのですが、
上記のような食事の変更で症状が改善する「食事反応性腸症(FRE)」と呼ばれる病気は、慢性下痢の原因において大きな割合を示しています。
診断までに少し期間を要する病気ですが、これらの食事療法でよくなる可能性は少なからずありますので、もし長い間軟便に苦労されている方がいましたら、ぜひご相談ください!
獣医師 木村(最近、いもけんぴで便通がよくなりました。)