しつこい外耳炎!
今回は、何度も繰り返す外耳炎、というテーマでお話させて頂きます。
診察の中でも占める割合が高い外耳炎ですが、一度治ったと感じてもまた何度も繰り返してしまうということが多く、定期的に治療を加える必要がある患者さんが多いと感じております。
なぜ繰り返してしまうのかというと、体質的に何かしらのアレルギーを持っていたり、たれ耳の子であったり、どうしても繰り返してしまうような素因をもっているということが多いからです。その場合の治療目標の一つは、炎症が慢性化、不可逆化(元に戻らない変化)し、外耳道がふさがってしまわないようにするということがあります。
最終的に、外耳道が閉塞してしまうと(図)、通気性の悪くなった耳道内で感染症が増悪し、外耳炎から中耳炎に波及することもあり、最終手段として外科的に耳を切除(耳道切除)する必要性も出てきてしまいます。
耳道切除については、以前の澤先生のブログをぜひご覧ください!
➡https://kemonomichi-ah.com/2020/04/09/%e5%85%a8%e8%80%b3%e9%81%93%e5%88%87%e9%99%a4%e8%a1%93/
外耳炎の診断は、PSPP分類というものと症状を照らし合わせて考え、それにあわせた治療方針を考えていきます。
P(主因)➡アレルギー、寄生虫、微生物、腺の異常、過剰な耳毛など
S(二次的要因)➡真菌、細菌(二次感染)、局所刺激、過剰な耳掃除、内分泌疾患など
P(促進要因)➡耳の構造(たれ耳など)、過度な湿度など
P(永続要因)➡上皮、外耳道、鼓膜の機能異常(特に不可逆的変化を伴うもの)や、薬剤耐性菌の存在など
ここには書ききれないほどたくさんの原因が考えられますが、代表的なものだけでもこれだけ考えられます。
これらを各検査(視診、触診、顕微鏡検査、薬剤耐性試験など)で検出したうえで、それぞれの症例にあった治療をすすめていきます。
主な治療内容としては、
・耳洗浄(耳垢、異物、過剰な耳毛の除去も含む)
・抗菌薬や抗真菌薬の点耳、全身投与
・抗炎症薬の点耳、全身投与
・食事の変更(低アレルギー食など)
が挙げられ、一定期間のこれらの治療で改善がみとめられない場合は、麻酔下での耳洗浄や、外科的なアプローチが必要な場合があります。
耳の炎症は徐々に進行していき、かなり炎症が強くならないと気がつけない場合もあります。外耳炎を繰り返す場合は、日頃から耳をよく観察して頂き、ひどくなる前に治療を加えていくことが重要になります。最近は、症状が出る前に定期的に点耳薬を使用するプロアクティブ療法というものも有効とされています。
ワンちゃんの耳が匂う、耳を痒そうにしている、耳を振っている、地面にこすりつけているなどのしぐさが見られたら、ぜひ早めの受診をおすすめいたします。
獣医師 木村