高齢猫の夜鳴きについて
猫が夜鳴きをする原因は、病気、老化、環境へのストレス、発情など多岐に渡ります。
若い頃は夜鳴きをしなかったのに、年齢を重ねて夜鳴きをするようになってしまったという相談はけっして少なくありません。病気なのか、認知症なのか、原因がわからなければ病院に行くべきなのかさえ、対処法にも困ってしまいますよね。また、家族のみならず、ご近所に迷惑になっていないかなど不安にもなるでしょう。
老齢猫の夜鳴きと聞くと、認知症になったんじゃないかと考えてしまう方も多いみたいなのですが、実際には病気が原因の場合や、その他複数の原因が混在しているケースもあります。
今回は、そのような老齢猫の夜鳴きの中で考えられる原因について解説していきたいと思います。
~代表的な病気~
・甲状腺機能亢進症…甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、落ち着きがなくなったり、やけに活発に動くようになることがあります。
・変形性関節症…12歳以上の猫の9割がこの病気を持っているといわれています。
その他、慢性腎臓病、糖尿病、難聴、失明などからの体調不良や不安から夜鳴きがおこることがあるので、まずはこれらの病気が隠れていないかを定期的な健診で把握しておくとよいでしょう。病気が見つかった場合は、その治療が最優先になります。
~環境要因~
・トイレの環境(大きさ、深さ、砂の材質や状態、場所、清潔さなど)
・キャットタワー(高さ、爪の引っかかりやすさ)
・床の材質(滑りやすくないか)
・ごはんや飲水容器(与える時間帯、量、材質、清潔さなど)
・同居猫、動物との関係
・自宅周囲の環境変化(工事など)
・運動不足
・室内温度
など色々。。
次に、病気の可能性が低い場合は、周囲の環境を見直してみましょう。上記の中で心当たりが感じられる点から変更を試みたりして改善が見られるかよく観察するとよいでしょう。
~その他~
・認知機能の低下
・不安、恐怖
・発情(未避妊、未去勢の場合)
病気と環境以外の原因としては、認知機能の低下などの可能性が考えられるでしょう。
また、難聴や視力の低下などからくる不安から鳴くこともあります。
あまりに症状が激しく、飼い主さんの生活に支障をきたす場合は、認知機能低下を抑制するような食事やサプリ、不安やストレスを軽減する薬物療法を用いることで改善を図ります。
まとめ
今回は、夜鳴きの原因をいくつかに分類して説明してみましたが、実際はこれらが複合的になって起こる場合や、なにをしても改善が見られず、原因が特定できない場合もあります。
たとえば、関節症を持ったネコちゃんが、その痛みや筋力低下によって、いままで使っていたトイレを跨ぐことが困難になり、その結果として痛みやストレスから症状が出るケースなどが考えられます。
どうしても夜鳴きが止まらない場合もあるかもしれませんが、少なくとも病気が隠れていて、その苦痛で鳴いている場合は早期発見が重要になります。
夜鳴きで、何かを必死に伝えている場合もあるので原因を探してそれを解決するのが一番の対策になるでしょう。すこしでも改善が見られ、穏やかに過ごすことができたら、お互いにとっての幸せになること間違いなしですね!
獣医師 木村