歯肉がボコボコ?
今回は、犬の歯肉過形成についてお話します。
歯肉過形成とは、歯肉がボコボコと過剰に成長し、場合によっては腫瘤を形成する病気をいい、口腔内の炎症、主に歯周炎によって発症し、プラーク(食べカスと細菌の塊)に反応するなどの原因で悪化するとされています。
症状としては、よだれや口臭が増したり、時に咀嚼や嚥下に違和感を感じることがあります。また、過形成となった組織が他の正常組織と比較して出血もしやすいため、かたいものを噛んだ時などに血がにじむ場合もあります。
さらに、腫瘤を形成した場合は、その見た目から何かの腫瘍(ガン)なのではないかと疑われることがあります。実際、見た目だけでの判断はできないので、必ず病変部位の組織を切除し、その病理組織検査を行うことで診断していきます。
見逃せない鑑別診断としては、
・悪性黒色腫
・扁平上皮癌
・線維肉腫
・棘細胞性エナメル上皮腫
などなどの悪性度の高い腫瘍達になります。
以下は実際に病理組織検査によって歯肉過形成と診断された症例になります。(左図 処置前)
全身麻酔下にて、歯肉過形成によって歯周ポケットの深くなっている部分を切除し、スケーリング(歯石除去)を行いました。(右図 処置後)
一度、歯肉過形成を起こした場合は、約1割が再発するとされているので、処置後も再発しないか経過を見ることが重要になります。
予防方法は、日頃の歯磨きや、スケーリング処置によって口腔衛生を保つことになりますが、ヒトでの発症には遺伝的要素が関連する場合もあります。イヌでも重度の歯周病の子で発症しない子もいれば、今回の症例のように中程度の歯石でも反応するケースが存在することから、何かの関連はあるのかもしれません。
飼われているわんちゃんの歯肉に違和感を感じている方がいましたら、ぜひ一度ご相談ください!
獣医師 木村