心タンポナーデ
みなさんこんにちは!!
いよいよ涼しくなってきましたね、急な気温の変化などで体調を壊さないように十分に気をつけてください。
今回は救急疾患の1つである心タンポナーデについてお話しします。
心臓は心膜というもので覆われており、通常でもこの心膜と心臓の間に少量の液体(心嚢水)が存在しており、これによって心臓が円滑な動きを行うことが可能となっています。この心嚢水が異常に貯留し、心臓の動きが妨げられて心臓の本来の機能が損なわれた状態を心タンポナーデといいます。
<原因>
・心臓腫瘍(ex.血管肉腫、心基底部腫瘍、リンパ腫…)
・心臓外腫瘍(ex..中皮腫…)
・うっ血性心不全
・炎症や感染
・外傷
・低アルブミン血症
さらには原因がはっきりしない特発性というものもあります。
<症状>
心タンポナーデにはベックの三徴と言われる①心音減弱、②血圧低下、③静脈圧上昇が引き起こされ以下のような症状が認められます。
- 嗜眠、虚弱
- 運動不耐性(疲れやすい)
- 体重減少
- 腹部の膨満
- 失神
- 呼吸困難
<診断>
レントゲン検査、エコー検査、心電図検査、血液検査などで診断します。レントゲンでは円形に拡大した心臓が観察されます。エコー検査では心臓周囲の心嚢水の著しい貯留が認められます。心電図検査でQRS波の低下および電気的交互脈が認められます。後述の心膜穿刺で貯留液が採取された場合は、その液体の性状検査を実施する場合もあります。
<治療>
1、心膜穿刺
心膜穿刺は心タンポナーデの動物に対するもっとも有効な処置であり、これによって症状の迅速な改善をもたらします。肋骨の間から針を穿刺して直接心嚢水を抜去します。
2、基礎疾患の治療
心不全や低アルブミン血症ではこれを改善することで心タンポナーデの改善も見込めます。
3、心膜切除
心膜穿刺を実施しても心嚢水の貯留を繰り返す場合は心膜切除を実施する場合があります。心膜を切除することで心嚢水貯留を防ぐことができます。ただし、産生された心嚢水は胸水として貯留するため、胸水貯留の著しい貯留が認められた場合はこれを抜去する必要があります。
心タンポナーデは緊急処置が必要な場合が多いため、上記のような症状が認められた場合はすぐに病院へいきましょう!
獣医師 日向野