病気

猫のアルドステロン産生腫瘍

こんにちは!獣医師の木村です。今回は比較的稀な猫ちゃんの副腎腫瘍についてお話しします。

ある報告では、さまざまな病気にかかった猫ちゃんの腹部超音波を実施した際にその7%に副腎の腫大が認められた、とされています。猫の副腎腫瘍には、コルチゾール産生腫瘍、性ホルモン産生腫瘍、褐色細胞腫、そして今回ご紹介するアルドステロン産生腫瘍などが報告されています。

病態

猫ちゃんの副腎腫瘍の罹患率は、先ほどお話ししたように低くなっており、わんちゃんよりも報告が少ないとされています。ある症例報告では、検出された副腎腫瘍のうち、約60%がアルドステロン産生腫瘍だったとされています。

また、腫瘍ではありませんが、慢性腎臓病によって左右両側の副腎が腫大する二次性アルドステロン症という病態も知られております。

アルドステロンは、ナトリウムを体に保持し、カリウムを排泄することで体内のミネラル、体液バランスや血圧を保つ働きを持っています。

不足すると脱水や低血圧になり、過剰になると高血圧や低カリウム血症を引き起こします。 また、持続する高血圧により、腎臓、心臓、眼、脳に障害を与えることもあります。

症状・診断

症状

「急に元気がなくなった」、「首が上がらない」、「高血圧を指摘された」
こういった症状の裏に、アルドステロン産生腫瘍という病気が隠れていることがあります。特に首があがらないという症状は、典型とも言えます。

血液検査

  • 低カリウム血症
  • 軽度のナトリウム上昇
  • アルドステロン値の上昇 または、レニン活性との比(※ARR)

※これは、アルドステロンが上昇するその他の疾患(慢性腎臓病、心臓病、肝不全など)との鑑別にも重要です。

血圧測定

  • 高血圧が認められる(収縮期血圧160mmHg以上)

画像検査

  • 超音波検査またはCT検査にて片側性の副腎腫大が認められる。

治療・予後

治療は大きく2つに分かれます。

外科手術

片側の副腎に腫瘍があり、転移も疑われない場合には外科的に摘出することで治癒が期待できます、メリットとして根本的な治療になる可能性が高いです。注意点としては、術前には高血圧や腎数値、電解質のコントロールが必要であり、術後には電解質が急変することがある、また特に高齢猫では麻酔リスクがつきものになります。ある報告では、副腎腫瘍を摘出した猫のうち77%が術後2週間生存したとされています。そこまで頑張ることが出来た場合の長期予後はよいものになっております。

内科治療

すでに腎臓病が進行している、高齢である、遠隔転移が認められている、両側性であるなど、手術が難しい場合は内科治療を行います。

主な治療薬は以下の通りです。

  • スピロノラクトン(アルドステロン拮抗薬)
  • カリウム補充(経口カリウム製剤)
  • 降圧薬(アムロジピンなど)

内科治療では完治は難しいですが、症状の改善は期待できます。内科治療での生存期間は、おおよそ7~33か月とされています。

最後に

この病気は比較的稀ではありますが、「なんとなく元気がない」「歩き方や姿勢がおかしい」「元気だけど健康診断の血液検査で数値が引っかかった」といった軽い変化から見つかることもあります。早期に気づき外科手術を実施することにより、長期的な予後を期待することもできます。当院では、腫瘍科専門医による診察も実施しておりますので、少しでも気になることがあれば、早めに動物病院にご相談ください。

獣医師 木村(結婚しました!)