病気

犬、猫の不整脈について

こんにちは、獣医師の木村です。最近は麻酔の勉強をしていく中で、循環器科の重要性を感じ、心電図の勉強に力を入れています。せっかくなので知識のアウトプットも兼ねて何回かに分けて不整脈についてお話ししようと思います。

はじめに

「健康診断で不整脈があると言われました」

「心電図で異常が見つかったけれど、大丈夫でしょうか?」

犬や猫の診察では、このようなご相談を受けることがあります。

実は、その全てが「不整脈=すぐに危険」というわけではありません。

犬では呼吸に合わせて心拍数が変化する「呼吸性不整脈」が正常なこともあります。一方で、失神や突然死につながる可能性のある不整脈も存在します。

そのため、重要なのは「不整脈があるかどうか」だけではなく、どのような不整脈なのか、なぜ起きているのか、心臓や全身にどのような影響を与えているのかを判断することです。

今月は、そもそも不整脈とはなにかという概要についてお話しします。

1. 「不整脈」とは?

2. 原因

3. 診断

4. 治療

5. 予後

6. まとめ

 1.「不整脈」とは?

心臓は、電気信号によって規則正しく動いています。

正常な心臓では、まず「洞結節」という場所から電気信号が発生します。

イメージすると、

洞結節 → 心房 → 房室結節 → 心室

という順番で電気が伝わります。

この電気刺激によって、

心房が収縮 → 心室が収縮 → 血液を全身へ送り出す

という一連の動きが起こります。

心電図では、この電気的な活動を波形として記録します。

ところが、この電気の発生場所や伝わり方に異常が起こると、

・心拍数が速すぎる、遅すぎる

・心拍が不規則になる

・本来出るはずのない場所から心拍が出る

・電気刺激が途中で伝わらなくなる

といった状態になります。

これが不整脈です。

2.原因:なぜ不整脈が起こるの?

代表的なものとして、

 心臓そのものの病気

弁膜症(犬では主に僧帽弁閉鎖不全症)、心筋症(猫では主に肥大型心筋症)、心筋炎

などがあります。

また、心臓以外の病気が不整脈を引き起こすこともあります。

・電解質異常

・腎臓病

・消化管疾患

・敗血症

・貧血

・腫瘍

・胃拡張・胃捻転

・薬剤

・麻酔

・強いストレス

など様々です。

特に犬では、脾臓の血管肉腫や胃拡張・胃捻転などの全身性疾患に伴って心室性不整脈が出現することがあります。

そのため、心電図で不整脈を見つけた場合には、心臓の検査だけではなく、血液検査や胸部レントゲン、腹部超音波検査なども組み合わせて、不整脈の原因を探すことが重要です。

3.診断

不整脈を診断するために最も重要な検査が心電図検査(ECG)です。

聴診で、

「心拍が不規則」

「途中で脈が飛んでいる」

「心拍数が速すぎるな」

と感じた場合には、心電図で詳しく調べます。

また、診察室では正常に見えても、自宅で失神や発作を起こしている場合には、ホルター心電図などを使って長時間心電図を記録することもあります。

4.治療

実は、不整脈の治療=抗不整脈薬を飲む、というわけではありません。

例えば、

症状のない洞性徐脈(SND:洞結節機能不全)→経過観察(※麻酔時には注意)

完全房室ブロック→ ペースメーカーで心拍を維持する

心房細動→ 心拍数をコントロールする(レートコントロール)

心室頻拍→ 危険な心室性不整脈を抑える

というように、不整脈の種類によって治療方法はまったく異なります。**

さらに、不整脈の原因となっている病気があれば、不整脈」と「原因となる病気」の両方を治療する必要があります。

5.予後

これは、不整脈の種類によります。

例えば犬にみられる洞性不整脈のように、正常な生理現象として認められるものもあります。

一方で、生命に直接関わる可能性のある不整脈も存在します。

また、予後を考えるときには不整脈そのものだけではなく、やはり原因が何なのかが非常に重要です。

同じ心室性不整脈でも、一時的な全身疾患(感染症など)に伴って出ているのか、心筋症などの重度の心臓病に伴って出ているのか、によって意味が大きく異なります。

6.まとめ

不整脈は、心電図を見ることで心臓の電気がどこで、どのように乱れているのかを推測できます。

不整脈がある=ただちに危険ということではありませんが、見逃してはいけない不整脈もあります。

・ふらつく

・急に倒れる

・運動するとすぐに疲れる

・呼吸が苦しそう

・心拍が極端に速い・遅い

・健診で不整脈を指摘された

といった症状がある場合には、心電図検査を受けることをおすすめします。

大切なご家族である犬や猫の心臓のリズムに少しでも気になることがあれば、早めに動物病院へご相談ください。

獣医師 木村