脂肪識炎
今回は、診察の中で時々遭遇するこの疾患についてお話しようと思います。
まず、脂肪織炎とは、脂肪組織の炎症性疾患の総称です。その原因として、感染(細菌、真菌)、外傷、昆虫咬傷(虫刺されなど)、腫瘍などが挙げられます。この中でも自己免疫の異常が関わるものとして、注射部位の脂肪識炎、縫合糸反応性肉芽腫(特に去勢、避妊手術後)、原因が不明な無菌性結節性皮下脂肪織炎があります。
これら病気の原因は、上に書いた通り、自己免疫異常によるものです。(自己免疫疾患と言います。)皮下などの脂肪識などにできたしこりや、そこから膿が出ていることに気づき(図1)、来院されるケースが多いです。膿と聞くと、細菌感染が連想されると思いますが、この病気では、実際にその膿を顕微鏡で観察しても細菌などは認められず、脂肪細胞ともにマクロファージや非変性好中球などの炎症細胞のみが認められます。(図2)
図1
図2
この病気の特徴として、膵炎や多発性関節炎との関連が報告されており、併発していることが多いことです。好発犬種は、国内ではミニチュア・ダックスフンドとされていますが、その他の犬種もしばしば遭遇します。膵炎はわんちゃんでも多い病気なので、膵炎歴がある子で、このようなしこりが見つかった場合は注意したいところです。
確定診断は、皮膚病理検査です。
治療方法は、単発なら外科切除を行い、多発病変の場合はステロイドなどの免疫抑制療法を長期で実施して再発を防ぎます。おおよそ65%の症例が長期的な管理が必要との報告がされています。膵炎などの併発疾患が生じた場合は、必要に応じてそちらの対症療法も同時に実施していきます。
今の時期では、狂犬病や混合ワクチン接種をされる方が多い時期ですので、ワクチン後にその部位が腫れてきたなど、心当たりがあれば一度ご相談ください。
獣医師 木村