病気

膀胱腫瘍

こんにちは、まだまだ大阪の暑さにはなれておりません、獣医師木村です。

 

今月は、高齢のわんちゃんで遭遇する膀胱腫瘍についてお話します。

 

膀胱腫瘍の割合は、悪性腫瘍である移行上皮癌が最も多く、全体の48.0%ほどを占めます。性差ではメスで発生しやすくオスの発生率の約1.7~1.9倍になります。

 

症状で多いのは、頻尿や血尿です。そう!これは膀胱炎と同様の症状なので、腫瘍なのか膀胱炎なのかは実際に蓋を開けなければわかりません。もちろん、膀胱炎の方が症例数は圧倒的に多いのですが、そういった症状の診察の中でときどき膀胱腫瘍に出会います。

さらに状態が悪い子では、尿道閉塞や尿管閉塞がすでに起こっており、救急対応が必要な場合もあります。

 

こちらは、実際の膀胱腫瘍の超音波画像の例です。

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膀胱の中は本来、尿以外はなにもなく、超音波検査では真っ黒に描出されるのが正常ですが、こちらは明らかに膀胱内に構造物が認められます。

 

本当に腫瘍なのか、また、どんな種類の腫瘍なのかを調べる検査としては、破砕性カテーテル法や膀胱鏡内視鏡生検という内科的方法と、実際に開腹して膀胱の異常部分を摘出する外科的方法があります。その中で各症例に合った方法で実施します。

 

治療法は、移行上皮癌を例にとると、

・膀胱の部分切除または全摘出術

・根治放射線療法

・化学療法

 

が選択肢になります。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、オーナー様と話し合いを行い、納得される方法で治療していくことになります。

 

移行上皮癌の場合は、悪性度が高い場合はどの治療法においても生存期間中央値(MST)がおおよそ1年ほどと厳しいデータが出ています。しかし、その子のQOLを維持するため、そして少しでも進行を遅らせて苦痛のない生活を長くすることを目的に治療を進めていきます。最近では、副作用がいままでの抗がん剤と比較して少ないとされる分子標的薬というものも使用され始めているので、少しでもQOLを落とさずに化学療法が行えるようになってきています。

 

高齢のワンちゃんが、尿や血尿を繰り返すなど気になる症状がある場合は、いつでもご相談くださいね。

 

獣医師 木村(毎朝頻尿気味)