役立つ話病気

あなたを救うかもしれない記事(SFTSについて①)

たいそうなタイトルをつけましたが、「具合悪くなったらすぐに病院へ行ってくださいね。」ってだけの記事です。SFTSという言葉は聞いたことはありますでしょうか。西日本で流行しているマダニが関連する疾患ですが、治療法がなく、致死率が非常に高い病気です。よろしければ、初めの部分に簡潔にまとめたところを読んで、ちょっとでもこの病気が脳裏に浮かんだときは病院へすぐに行ってください。

はじめに、わかりやすく、かんたんに

一緒に生活しているわんちゃん、ねこちゃんが具合悪くなって、ご自身も体調が悪くなった際、人獣共通感染症(動物から人へ、人から動物へ伝播可能な感染症)である可能性があります。
SFTSもそのうちの一つです。潜伏期間は2週間程度であるため、動物の容態が非常に悪かった日から2週間以内に、自身の体調も悪くなってきた際、SFTSに感染しているかもしれません。
高齢者ほど、重症化しやすく致死率も10~30%と非常に高い疾患であるため、早めに受診されることをお勧めします。
死亡率は犬で約47%、猫で62%で、残念ながら猫では1週間以内に亡くなることが多いです。
特に、犬に感染した時は、無症状から軽症であることもあり、感染源となってしまう可能性があります。
風邪のように飛沫感染はしませんが、マダニ媒介だけでなく、感染者(人、犬、猫など)の体液等が眼や口、傷口に付着することでウイルスが体内に侵入することで感染します。
動物病院などで処方されるノミ・マダニの予防薬ではSFTSの予防はできません。

以降は、個人の感想を混ぜながらより詳細に記載していきます。(2025年10月現在の情報です)

量が多くなってしまったので、今月は概要のみの記載です。
来月はSFTSの特徴や診断・治療などについて記載します。

SFTSとは、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome )のことであり、人獣共通感染症(人も動物も感染する)で、4類感染症、3種病原体に分類される疾患である。

この病気は2011年に中国で報告され、日本では2013年に国内での発生が正式に報告された、割と新しい病気である。世界では東アジアを中心に分布しており、最近では東南アジアまで広がっているようである。当初中国で報告された際は、動物では症状を呈さず、人のみが発症するとされていたようであるが、その後日本と韓国においては動物(犬猫など)においても、SFTSを発症することが判明している。
なお、東南アジア、東アジア以外でSFTSの確定診断はされていない。そのため、ワクチンや特効薬については数年前に流行した新型コロナウイルスのように世界中で蔓延していないことから、開発速度が遅いとのではないかと考えている。

SFTS 患者が報告されている国・地域 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001229138.pdfより

日本では、西日本中心に分布する疾患であるが、環境の変化により分布は徐々に北上しているようである。
最近のニュース2025年6月発表では茨城県にて5月12日にSFTSに感染した猫が死亡したことから、関東でも無視できないようになってきたと個人的に考えている。また、2025年5月には三重県にて、SFTS感染猫の治療をしていた獣医師が死亡した。一種の職業病といえるかもしれないが、普段から動物と生活している飼い主、オーナーにもかなりのリスクがあり、後述の通り死亡率もそれなりに高いため、十分気を付けたほうが良いだろう。

SFTS届出症例の届出地域 (n=1,185、2025年7月31日現在) https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/12668-sfts-ra-0801.htmlより

SFTSウイルスはマダニと野生動物間で維持されており、野生動物では症状がないことも多い。
人、犬、猫では感受性が高く感染すると発症することがある。
また、猫での報告例が多いことから猫のイメージが強いが2017年には徳島県において犬から人への感染があったと報告されている。犬は猫と比べて完全室内飼育の個体数が少ないことから、犬が感染するリスクは非常に高いと考える。(報告数が少ないのは意識の問題と重傷個体の割合が関係しているのではないだろうか。)
リスクのイメージ(想像)
外に出る猫>>外に出る犬>>>室内飼育の猫>室内飼育の犬

法定伝染病であるため、人においては発生件数は報告、管理されている。一方で、動物においては報告義務はなく診断も十分に行われていない可能性がある。そのため、実際の発生件数は報告件数よりも多い可能性が高い。なお、報告数は徐々に増加しており、現時点では大阪においてはそれほど多くはないが、いずれ無視できない疾患と認識される時が来るかもしれない。

日本国内におけるSFTS発症イヌ、ネコの報告数(2017年~2024年、2024年12月31日現在)https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/12668-sfts-ra-0801.htmlより

現在、獣医療において有効である治療薬やワクチン等は存在しないが、長崎大学においてmRNAワクチンの開発が進められているようである。近い将来、大阪でも大きな問題となりうることを考えると、これらがなるべく早く入手できるようになることを願っている。

SFTSのmRNAワクチンの開発の記事 https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science379.htmlより

参考
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002v5pa-att/2r9852000002v5qr.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001229138.pdf
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/12668-sfts-ra-0801.html
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/IASR/Vol46/546/546r08.html
https://www.fujifilm.com/fftc/ja/news/332
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science379.html
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20171011_01/index.html
動物病院向け 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)対応ガイドブック

大阪でこの記事が役立つような状況にならないことを願います。

獣医師 佐藤🐈🍄