病気

犬の甲状腺癌の診断・治療

みなさんこんにちは!獣医師の木村です。今月は、犬の甲状腺癌についてお話しします。

愛犬の首にしこりがある、最近なんだか元気がない…。そんなときに疑われる病気のひとつが「甲状腺癌」です。

甲状腺癌とは?

まず、甲状腺とは喉の当たりに左右に1つずつある重要な臓器です。甲状腺は、代謝やエネルギー消費に関わる甲状腺ホルモンを分泌します。身体の機能維持に必須です。

犬の甲状腺癌は、甲状腺にできる悪性腫瘍(がん)です。犬での発生率は1.1%と比較的稀ですが、内分泌の腫瘍としては一般的なものになります。甲状腺腫瘍の約90%が悪性の「甲状腺癌」です。

症状

初期は気づきにくいですが、進行すると、

首のしこり(最も多い)

が認められます。

気管の圧迫による以下の症状

・咳

・呼吸困難

・食べにくい

・飲み込みにくい

・声の変化

また、甲状腺の働きが乱れると(機能性の甲状腺癌といいます)、

・多飲多尿

・体重減少

・下痢

などが見られることもあります。

診断

・頸部の触診

・気道圧迫に付随する症状の検出

・血液検査での甲状腺ホルモンの異常値

上記から初期診断がなされることが多いです。

組織学的な診断としては、腫瘍に針を刺して行う細針吸引細胞診(FNA)を行う場合もありますが、血流が豊富な腫瘍として有名であり、出血のリスクも高いことから、慎重に実施の有無を検討する必要があります。

また、この腫瘍は転移率が高く、38%の症例で、初診時に転移が認められ、主に領域リンパ節、肺などに転移します。転移の有無や腫瘍の広がりについては、触診、超音波検査、X線検査、CT検査などが用いられます。

治療方法

  •  外科手術(第一選択)

腫瘍が動く(可動性あり)場合は外科手術が最も推奨されます。

完全に取ることができた場合は、約30〜34ヶ月(約2.5〜3年)と長期生存が期待できます

  •  放射線治療

腫瘍の周囲固着が著しいなど手術不適な場合でも有効な治療手段です。

1年後の無増悪率が約80%であり、大きな腫瘍にも対応が可能です。

  •  化学療法

分子標的薬(トセラニブなど)の使用により、約75〜88%で腫瘍の縮小または増大の抑制といった臨床的効果が認められたとの報告があります。

(腫瘍の大きさ、転移の有無、血管への浸潤の程度によっても予後は変化します。)

最後に

甲状腺癌は怖い病気ですが、早期発見し、適切な治療を選ぶことで、長く穏やかに過ごせる可能性も十分あります。「首のしこり」に気づいたら、早めに動物病院へご相談ください。

獣医師 木村