病気

犬の股関節形成不全について

「最近、散歩を嫌がるようになった」
「立ち上がる時に痛そう」
「うさぎ跳びのような走り方をする」

このような症状が見られる場合、股関節形成不全という病気が隠れている可能性があります。股関節形成不全は特に大型犬に多い病気として知られています。

股関節形成不全とは?

股関節は、骨盤の「受け皿(寛骨臼)」と太ももの骨(大腿骨)の先端がぴったりとはまり込むことで、スムーズに動くようになっています。

股関節形成不全では、この関節に異常なゆるみが生じて股関節が不安定になります。

その結果、

・関節に負担がかかる

・炎症が起こる

・軟骨が傷つく

・関節症(変形性関節症)が進行する

という流れで、痛みや歩き方の異常が現れます。

発症しやすい犬種

特に大型犬で多くみられます。

代表的には

レトリバー種(ゴールデン、ラブラドールなど)

シェパード種(ジャーマン・シェパードなど)

超大型犬(バーニーズ・マウンテン・ドッグ、セント・バーナード、ニューファンドランドなど)

などです。

ただし、小型犬でも発症することがあるため注意が必要です。

原因は一つではありませんが、犬種や家系などの遺伝的要因が最も大きな要因です。

遺伝的素因があっても、急激な成長、肥満、過度な運動、滑りやすい床(フローリングなど)などの環境要因によっても悪化することがあります。

症状

子犬では、走りたがらない、散歩を嫌がる、うさぎ跳びで走る、階段を嫌がる、などがみられます。歩き方について、左右に腰を振りながら歩く様子を例えてモンローウォークと呼ばれることがあります。高齢になると変形性関節症が進行し、慢性的な痛みが強くなります。このような慢性期になると、立ち上がりが遅い、運動後に足を引きずる、お尻の筋肉が細くなるなど、関節炎による症状が出てきます。

診断

① 身体検査

・歩き方

・股関節周囲の筋肉量

・股関節を動かした時の痛みや緩み

・股関節可動域

などを調べます。

※麻酔または鎮静化で行うバーデン試験オルトラニ試験といった評価方法もあり、必要に応じて実施します。

② レントゲン検査

診断で最も重要なのがレントゲン検査です。

正確な撮影のために鎮静または麻酔を行う場合もあります。

レントゲンでは

・股関節の緩み

・骨の変形

・関節症の程度

などを評価します。

また、若齢時の診断では、

Penn Hip(生後16週齢から検査可能):アメリカで開発された股関節形成不全の早期発見を目的とした検査プログラムです。世界共通の方法で股関節のゆるみを数値化し、将来的な股関節形成不全のリスクを評価することができます。

JAHD Network:日本動物遺伝病ネットワーク(一般的には1歳齢以降の評価が推奨):犬の遺伝性疾患を減らし、将来の犬たちがより健康に暮らせるように設立された団体です。股関節形成不全などの遺伝性疾患を一定の基準で評価し、その結果を繁殖や健康管理に役立てることを目的としています。

といった目的に応じて上記のような専門的組織による特殊なレントゲン評価法を用いての診断方法もあります。

治療

保存療法(内科治療)

症状が軽い場合はまずこちらを選択します。

・体重管理

・環境管理(滑りにくい床材、高低差の管理)

・適度な運動

・消炎鎮痛薬

・サプリメント  (特にEPA:エイコサペンタエン酸は有効とされています。)

外科治療

痛みが強い場合や保存療法で改善しない場合には手術を検討します。

代表的な手術には

・若齢犬

・恥骨結合癒合術(JPS)

・骨盤三点骨切り術(TPO)

・1歳以上

大腿骨頭頚部切除術(FHNE)

・人工股関節置換術(THR)

があります。

お家でできるケア

日常生活でも症状の悪化を防ぐ工夫ができます。

・肥満を防ぐ

・フローリングに滑り止めマットを敷く

・急なジャンプを避ける

・痛みのコントロールを行いながら適度な運動を続ける

・長時間・激しい運動は避ける

無理に安静にしすぎると筋力が落ちてしまうため、「適度な運動」を続けることが大切です。

最後に

股関節形成不全は、早期診断・適切な体重管理・運動管理・痛みのコントロールが非常に重要な病気です。

気になる症状がある場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

獣医師 木村