病気

犬猫の不整脈:「インパルスの形成異常」について

こんにちは!前回のブログからは心電図、不整脈について、自分の勉強アウトプットも兼ねて何回かに分けて発信しております。

先月は私事についてだったため、今月からはまたしっかりお勉強していきたいと思います。(時折プライベートについても挟んでいきます、、、)

さて、今回からは不整脈について、その発生原因から分類して解説していきます。

犬猫の不整脈:「インパルスの形成異常」について

心臓は電気信号によって規則正しく動いています。不整脈は大きく分けると「電気信号の発生異常(インパルス形成異常)」と「電気信号の伝わり方の異常(インパルス伝導異常)」の2つに分類されます。

今回はそのうち、心臓の本来のペースメーカー(洞結節)以外の場所が勝手に電気信号を出してしまう「インパルス形成異常」による代表的な不整脈を3つご紹介します。

1. 洞性頻脈(どうせいひんみゃく)

本来のペースメーカーである「洞房結節」が、何らかの理由で必要以上に速い周期で電気信号を出してしまう状態です。

  • 原因・病態

自律神経(交感神経)の興奮によって起こります。痛み、興奮、ストレス、発熱、脱水、貧血、甲状腺機能亢進症(特に猫)などが原因となります。

  • 診断

心電図検査で診断します。波形の形(P波やQRS波)は正常ですが、波形と波形の間の間隔が狭くなり、心拍数が基準値より明らかに増加します。

  • 治療

洞性頻脈自体を抑えるというよりは、根本的な原因(痛み、脱水、原疾患など)の治療を行います。

  • 予後

原因となっている病気や状態が改善されれば、予後は良好です。

2. 上室性期外収縮(じょうしつせいきがいしゅうしゅく:APC)

洞房結節以外の「心房」や「心房心室のつなぎ目(房室接合部)」から、予定より早いタイミングで電気信号が出現する不整脈です。

心電図では、「早く出現する波形(QRS波)の形が、通常の正常な波形と似ている」のが特徴です。

  • 原因・病態

僧帽弁閉鎖不全症などによる心房の拡大、心筋炎、内分泌疾患、心臓以外の全身性疾患(脾臓疾患、低カリウム血症など)、麻酔薬の影響によって心房の心筋が刺激されることで発生します。

  • 診断

通常の心電図検査や、24時間心電図を記録するホルター心電図検査を用いて発生頻度や連続性を評価します。

  • 治療

単発で症状がない場合は経過観察となります。頻発して上室頻拍に移行する場合やふらつきや失神などの症状は、抗不整脈薬(ベータ遮断薬やジルチアゼムなど)を投与します。

  • 予後

基礎疾患(心臓病の進行度など)に依存します。単発であれば大きな問題になりませんが、連発すると心不全を悪化させる要因になります。

3. 心室性期外収縮(しんしつせいきがいしゅうしゅく:VPC)

「心室」の壁から、予定より早いタイミングで電気信号が発生する不整脈です。

心室から出た信号は通常と異なるルートを通るため、心電図では「幅広く、歪んだ形のQRS波」として現れます。

  • 原因・病態

心臓自体の病気(拡張型心筋症、肥大型心筋症、心筋炎)のほか、心臓以外の病気(脾臓腫瘍、胃拡張胃捻転症候群、膵炎、重度の貧血や酸塩基平衡の異常など)、自律神経の影響、薬剤、特発性に分類されます。

  • 診断

心電図検査で特徴的な幅広のQRS波を確認します。基礎疾患の有無を特定するため、血液検査、レントゲン検査、超音波検査を併せて行います。

  • 治療

単発であれば経過観察ですが、ヒトのVPC分類に当てはめて、Grade5段階のうちGrade2以上該当する場合は致死的な不整脈(心室細動など)へ移行する危険があるため、精密検査、場合によって抗不整脈薬(リドカインやメキシレチンなど)による治療が必要です。

  • 予後

基礎疾患のコントロールと、不整脈自体の管理に大きく左右されます。特に心室頻拍へ移行している場合は突然死のリスクがあるため注意が必要です。

最後に

「不整脈=心臓の病気」と思われがちですが、脾臓や胃の病気、貧血など全身のトラブルから不整脈(特にVPC)が起こることも多いため、不整脈の種類のみで予後の判定は困難であり、背景疾患の把握、制御が重要になります。

次回は、「電気信号の伝わり方の異常(インパルス伝導異常)」に起因する代表的な不整脈についてお話します。

不整脈の多くは、症状としてふらつき、失神など低血圧症状が主になります。

ご家族のわんちゃん、ねこちゃんにこのような心当たりのある場合は、いつでもご相談してくださいね。

獣医師 木村