猫の鼻腔リンパ腫について~鼻筋が腫れてるときはどうする?~
こんにちは!今月はネコちゃんの鼻腔リンパ腫についてお話します。
鼻腔リンパ腫:秋~冬の季節の代わり目の猫ちゃん注意
秋~冬の季節の代わり目では、猫ちゃんでくしゃみ、鼻水など風邪症状の子が多くなりますが、その中で見逃しちゃいけないのがこの鼻腔リンパ腫になります。
鼻腔リンパ腫:症状や特徴は?
症状、特徴としてわかりやすいのは、見た目の変化です。ただ風邪のような症状が出るだけでなく、顔面の左右対称性が損なわれることが多いです。ほっぺた、鼻の上、眼の周りが腫れているように見えます。また、顔面の変形がなくても鼻血が出る場合は腫瘍の可能性を考慮します。(もちろん、必ずというわけではありません。)
重症例だと、鼻つまりがひどかったり、呼吸困難になってしまい、食欲の低下や衰弱してしまうこともあります。
確定診断は生検による病理組織検査
診断は、レントゲン、細胞診、CT検査などがありますが、確定診断は生検による病理組織検査になります。しかし、生検には全身麻酔が必要なことが多く体への負担が大きいため、症例の状態を見ながら可能な検査の中で診断していく場合もあります。
放射線療法と抗がん剤による化学療法が適応
治療法は、腫瘍が鼻腔に限局していて腎臓などの遠隔転移がない場合は、放射線療法と抗がん剤による化学療法が適応となります。現在のところは、どちらが良いかはっきりとしたデータは出ていませんが、最近の論文では放射線治療を受けた症例で生存期間が長いという傾向があります。最終的にどちらを選択するかは、ねこちゃんの容態やオーナーさんの希望を考慮して決定します。腫瘍が遠隔転移してしまっている場合は、化学療法がメインになります。また、状況によっては両方を行う場合もあります。
放射線治療の予後について
予後は、放射線治療の場合は生存期間中央値が約400~1000日と文献により幅があり、複数のデータが報告されています。化学療法の場合は、生存期間中央値が約100~400日と放射線療法より短い印象にはなりますが、そこに有意差が認められていないことから、症例ごとに治療反応が異なると考えられます。
症状だけでは、風邪なのか腫瘍なのか判断が難しくややこしいところではありますが、どちらにしても、特に中齢期以降のねこちゃんで上記のような症状が続く場合は、一度しっかり診察および検査することを推奨いたします。
獣医師 木村