イヌのパルボウイルス感染症の診断と治療について
こんにちは!梅雨に入って日光不足、ビタミンD不足な獣医師木村です。
今月は特に子犬で致命的な病気である、パルボウイルス感染症についてお話しします。
犬のパルボウイルス感染症とは
パルボウイルスというウイルスによって引き起こされる感染症です。経口感染により感染するため、感染した犬の糞便や吐物とともに排出されたウイルスを、他の犬が口にすることで感染します。特に子犬の離乳期後である生後4-12週齢の母犬からの移行抗体が低下するタイミングで感染しやすいとされています。
症状
おおよそ4~14日間の潜伏期(感染しているが症状はない期間)を経た後に、主として重度の下痢や嘔吐、そして免疫を守る白血球の減少を引き起こし、それにより脱水がひどくなってしまったり、弱った腸からの二次的な細菌感染などで敗血症やSARS(全身性炎症反応症候群)が生じて死亡に至る場合もあります。
診断
上記の症状、白血球数の低下、電解質の異常、抗原検出キットなどで総合的に診断していきます。
治療
多くは入院下での集中的な治療が必要になります。脱水に対して点滴をし、二次感染に対して抗菌薬の使用、嘔吐や下痢を止めてあげるお薬がメインになります。同時に栄養補給も行い、体が抗体を作り出して、ウイルスに対抗できるようになるまで粘ることになります。
予後、予防
早期に適切な治療が行えた場合は80~90%の子が生存できるようになるとされていますが、無治療の場合は9.1%であるため、いかに早く治療を開始できるかが肝になります
また、この病気はワクチン接種で予防ができるので、適切な時期でのワクチン接種も重要となるでしょう。
パルボウイルスは感染力も強いため、過密な飼育や不衛生な状況で感染した子がいると一気に感染が広がる可能性があります。このウイルスは一般的なアルコール消毒では死滅しないため、塩素系消毒剤により環境中の消毒を徹底する必要があります。
当院では、AP水と呼ばれる次亜塩素酸を成分とした消毒液を使用しており、安全性が高いのが特徴で、なおかつ一般的な塩素系消毒剤よりも有効性の高いとされています。
子犬ちゃんをお迎えして、なんか元気がなくお腹の調子が悪い、なんてことがあったら、症状がひどくなる前にご相談ください!
獣医師 木村