犬の変形性関節症🐕
今月は、先月に引き続き犬の変形性関節症について紹介します。
犬では1歳以上の約20%が罹患しているとされています。
原因
犬の変形性関節症は原発性と二次性に分けられます。
原発性:異常な摩耗、加齢による関節軟骨の劣化、肥満、過剰な運動、遺伝
二次性:発育性の関節疾患(肘関節形成不全、股関節形成不全、レッグペルテス病、膝蓋骨脱臼、骨軟骨症など)、外傷性(前十字靭帯断裂、関節内骨折・脱臼)などが要因で続発
猫では原発性が多いですが、犬では原発性は珍しくほとんどは何らかの整形外科疾患に続発して起こります。
好発犬種や性差などはないとされていますが、体重が重い大型犬で多い傾向があります。小型犬でも発生します。
関節の不安定性や形成異常、関節組織への傷害、炎症などにより関節軟骨が傷害されると、関節軟骨はびらん・潰瘍を起こして薄くなり、その結果として軟骨下骨が露出し摩耗して硬化します。一度損傷を受けた関節軟骨は再生しません。関節軟骨の損傷により滑膜炎も生じます。これらが慢性化すると正常な関節構造が失われて痛みや機能障害を引き起こします。

症状
・慢性進行性の跛行(通常は片側性)
・起立困難
・運動不耐性
・疼痛(これに関連して攻撃的になるなどの性格の変化)
・強張り
・元気消失
・階段の上り下りやソファなどへの飛び乗りをためらったりできなくなる
・歩行の変化や行動の変化
・筋肉量の減少 など
診断
レントゲン検査や整形外科学的検査、神経学的検査などを行って総合的に評価します。関節鏡検査を行うこともあります。
レントゲン検査では、骨棘形成、軟骨下骨の硬化や嚢胞形成、関節周囲の軟部組織の腫脹や石灰化などが認められます。
これは不可逆的な変化であり、これらが認められた場合はすでに病態が進んで変形性関節症の末期になっていることが多いです。
治療
変形性関節症の原因となっている基礎疾患があればまずはその治療を行います。
変形性関節症と診断できた時点では病態が進んでいることが多く、治療の目的は進行を遅らせて生活の質を維持させることが主になります。
変形性関節症の管理として、体重管理、運動管理、理学療法やリハビリテーション、薬物療法、サプリメントの使用があり、これらを組み合わせて臨床徴候を抑えていきます。
上記のような管理法で改善がない場合は外科的治療を行う場合もあります。
猫と同様、犬にも1ヶ月に1回お注射をすることで痛みを緩和させるお薬があります(イヌ抗NGFモノクローナル抗体製剤)。
予後
基礎疾患の重症度などにもよりますが、中程度の変形性関節症の子では内科的治療で一時的な改善が見られる場合が多く、病態が進んだ末期の変形性関節症では徴候の改善はあまり期待できません。
お家の子が四肢を痛がっている、歩き方がおかしいなど普段と様子が違うと感じた場合はお気軽にご相談ください🐾
獣医師 児島🐶