肺高血圧症の診断、治療
こんにちは!今月は、犬の肺高血圧症についてお話しします。
肺高血圧症とは?
肺高血圧症とは、心臓から肺に送る血管である肺動脈の圧が上昇してしまう病気の総称をいいます。よって、原因は様々であり、おおきく6群に分類されています。
1群には遺伝性や先天性心疾患、特発性(原因不明)などが、2群は主に左心性心疾患によるもので、ワンちゃんで多い僧帽弁閉鎖不全症もこのグループに含まれます。3群は呼吸器疾患や低酸素に関わる原因、4群は血栓症、5群にはみなさんが予防されているフィラリアなどの感染症などが該当します。その他、原因の詳細が不明であったり、複数の原因がある場合は6群に分類されます。
症状
症状は、そんなに激しく動いていないのにすぐ息切れが起こる、呼吸が早い、虚脱(体に力が入らない状態)失神、咳などが挙げられます。また、身体検査所見では、チアノーゼ(舌が紫色になる)が起こっていたり、腹水が溜まることによる腹部の膨満なども見られることがあります。
診断
肺高血圧症自体の診断は主に画像診断で行われ、X線検査および心臓超音波検査が主軸になります。しかしながら、上記に書いたように原因が様々なので、原因を精査するために場合によっては血液検査、心電図、CT、MRIなども用いて総合診断する必要があります。
治療
治療方針は、それぞれの原因疾患の治療が主に必要になります。しかし、それだけでは効果が不十分な場合や、1群に該当されるように特発性の場合は、肺血管拡張剤を主として、利尿剤、血管拡張剤、強心剤などを用いて治療する必要があります。
予後、予防について
予後については、原因や重症度によりさまざまですが、治療が遅れたり、呼吸器疾患に続発するものは特に悪く、数カ月で亡くなってしまう場合もあります。比較的遭遇しやすい、僧帽弁閉鎖不全症に続発した場合は、おおよそ360~567日というデータがあります。
肺高血圧症を診断された場合、悪化しないように、普段からドッグランなどの激しい運動や階段の上り下り、高所や飛行機での移動を避けることで少しでもしんどくさせないようにすることが重要です。また、食事面では塩分を控えたフード選びも重要です。
最後に
肺高血圧症は現状、確立された有効な治療に乏しく、治療が困難な病気ではあります。しかし、しっかり診断して治療することで、息苦しさなどの日常の苦痛を少しでも緩和させてあげることができます。上記のような症状に心当たりがある場合はご相談ください。
獣医師 木村