病気

突発性後天性網膜変性症候群(SARDS)について

こんにちは!今月は、最近の診察で本疾患を疑う症状が来院されたのでお話します。

突発性後天性網膜変性症候群(SARDS)

この病気は、健康な中齢の犬に見られる疾患で、1日から数週間で急激に両眼が見えなってしまう疾患です。なりやすい犬種はないとはされていますが、ミニチュア・ダックスフンド、ミニチュア・シュナウザーでの発症が多い傾向にあります。実際に僕が最初に遭遇した子もミニチュア・シュナウザーでした。

症状

症状は、やはり急に目が見えなくなり、周りのものにぶつかって歩くようになったり、恐る恐る歩くので、歩幅が小さくなり、不自然な歩き方になることが多いです。その他、見た目では両眼の瞳孔が開くので(散瞳)、眼に光が当たると、眼の中が緑色に見えます。同じく散瞳して眼の中が緑色に見える病気で緑内障というものがありますが、こちらは眼圧検査で区別することができます。

診断

最終的な診断は、網膜電位検査(ERG)で行いますが、その他の所見としては、体重増加、多飲多尿、血液検査では肝酵素上昇が見られる場合もあります。また、ERGを除く眼科検査では、異常所見が得られない場合も多いことも特徴です。
(※ERGは当院では行う事ができないので、この検査が必要と判断した場合は眼科の専門病院を紹介させていただきます。)

治療

残念ながら、現在のところは治療方法は確立していないため、その後は失明した状態で生きていかなくてはならなくなります。お家では、できるだけ障害物になるものを置かないようにしてあげたり、家具の配置などをなるべく変えないようにするなどで、さらなる怪我をさせないように工夫してあげる事が重要になります。いち早く原因が解明され、治療法が確立されることを願うばかりですね…

眼が見えなくなるという現象には、眼の異常に加えて脳神経の異常も鑑別疾患に存在しており、各検査からどこに異常があるのかを的確に診断する必要があるので、日々の診察でも頭を悩ませることも多いです。

今回は、遭遇する頻度の低い病気のご紹介でした。来月からは、また麻酔のお話ができたらと思います。

獣医師 木村