役立つ話病気
小型犬の歯周病のリスクについて
2024年に公開された歯周病に関する論文を読みましたので紹介します。
歯周病とは
細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患であり、成犬の80%以上に認められます。
歯肉炎が慢性化すると、徐々に歯周組織へと広がることで、不可逆的に深い歯周ポケットを形成し、歯の動揺や脱落が生じてしまいます。
ひどい場合だと下の顎の骨折、顔や口に穴が空いて膿が出る(外歯瘻・口腔鼻腔瘻)といった症状も見られます。
研究で分かったこと
- 生後1歳未満の犬の多くは健康な歯茎である。
- 1歳で軽度、2歳で中程度、3歳で重度の歯周病が現れ始める。
- 歯周病関連菌の一つであるProrhyromonas gulae(以下P. gulae)を持つ犬は、持たない犬と比べて重度の歯周病であることが多い。
- 高齢犬の多くはP. gulaeを持っている。特に6歳以上の犬のほとんどが中程度〜重度の歯周病である。
- 一度定着したP. gulaeの排除は難しい可能性
- 日本で飼育頭数が多いチワワ、ダックスフンド、トイプードルにおいて
チワワ:P. gulaeを持っていない率が高く、歯周病リスクが低い可能性
トイプードル:感染しているP. gulaeの種類が多いほど歯周病が重症化する可能性
ダックスフンド:他の犬種より歯周病が重度であるが、P. gulaeとの関連は不明
飼い主さんへ 歯周病のために今できること
歯周病は1歳から始まっています。「まだ若いから大丈夫」、「まだ臭くないから大丈夫」ではなく、若いうちから、歯石がつかないよう定期的な口腔内ケアと病院でのチェックを習慣にしましょう。
別の論文ですが、歯磨きについては毎日もしくは2日に1回実施すると歯肉炎予防効果があると報告されているので、慣れるまで大変かと思いますが頑張ってみましょう。(残念ながら週に1回、2週間に1回の場合は全く実施しない場合と同じと報告されています。)
参考
Junya Y, Hidemi Y, et al. Investigation of periodontal disease development and Porphyromonas gulae FimA genotype distribution in small dogs. Sci Rep. 2024 Mar 4;14(1):5360.
獣医師 佐藤