上皮小体機能亢進症
内分泌系の疾患(ホルモン)の中では遭遇頻度が少ないですが、上皮小体についてお話しします。
上皮小体とは
上皮小体(副甲状腺)とは、血中のカルシウム濃度を調整する役割を果たします。上皮小体からパラソルモン(PTH)というホルモンが分泌されると、骨からのカルシウムを放出させたり、腎臓や消化管からのカルシウム吸収を促したりします。犬においては、甲状腺に2対、計4個存在しています。
上皮小体機能亢進症の原因
上皮小体機能亢進症では原発性と続発性の2つに分類されます。
原発性は上皮小体の細胞が異常に増殖し、過剰にホルモンを分泌してしまう病態で、主に良性の腺腫、悪性の腺癌が原因となります。腺癌は稀でありほとんど遭遇しません。特に高齢犬(約10歳以上)で見つかることが多いです。
続発性は腎臓病や慢性的な栄養不足(カルシウムやビタミンD不足によるもの)から、持続的に上皮小体が刺激され亢進症に至ります。
症状
血中のカルシウム濃度が高値となると以下のような症状が見られます。
- 元気がない
- 食欲不振
- 震え
- 神経過敏
- 多飲・多尿
- 嘔吐、下痢、便秘
診断
上皮小体機能亢進症の検査には以下の項目を測定します。
- 血中カルシウム濃度を含む各種血液検査
- 血中イオン化カルシウム濃度
- 上皮小体ホルモン(PTH)の測定
- 超音波検査
- レントゲン
- 尿検査
などを必要に応じて実施します。高カルシウム血症を示す病気はいくつかあるのでその除外診断を行っていきます。
治療
まずは高カルシウムや低リン血症の治療を開始します。主に点滴での補正や内服によって動物の状態の安定化を図ります。
状態が安定し、カルシウムおよびリンのバランスが問題なければ外科手術にて上皮小体を切除します。上皮小体4つのうち1つは残すことでカルシウムを調整できるようにしますが、術後は低カルシウムとなりやすいので細かく血中濃度を測定することでカルシウムをコントロールしていきます。基本的に外科手術でカルシウムがコントロールできたら長期的な予後が望めます。
以上が上皮小体機能亢進症のお話でした。なかなか遭遇しませんが、症状を見て気になることがありましたらぜひ一度動物病院に行かれてみてください!
獣医師 日向野