病気

リンパ管拡張症を伴う慢性腸症の症例について

こんにちは!今月は最近遭遇したリンパ管拡張症を伴った慢性腸症の症例について報告しようと思います。

・年齢15歳 チワワ

・既往歴:脾臓腫瘤(摘出済み)

下痢2週間以上が続くとの主訴で来院されました。

<糞便検査>

当院にて、まずは糞便検査を実施しましたが、特に感染性の病原体は検出されませんでした。

<身体検査、超音波検査、血液検査>

身体検査時に、右側鼠径部ヘルニアを疑う所見が認められたため、腹部超音波検査にてヘルニア内容物の確認をしたところ、ヘルニア嚢には液体が満たされており、腹水に由来するものと判明しました。

→腹水を伴う下痢については、低アルブミン血症によるものが多いため、追加で血液検査を実施したところ、アルブミンの数値が、0.9g/dL(基準値2.5~3.5g/dL)と著しい低値が認められました。

<内視鏡検査>

このような症例では、慢性の腸炎により腸からアルブミンが漏れ続けて、このような低アルブミン血症を呈することがあります。

各種検査にてその他の疾患を除外した後に、全身麻酔下にて消化管内視鏡検査を実施しました。

十二指腸の粘膜において、白い粒々が見えていますが、こちらは、「リンパ管拡張症」といい、慢性の腸炎で認められることの多い所見が得られました。そこを含めた複数個所を内視鏡下生検を実施することで、最終的な慢性腸炎の原因を診断することが出来ます。

今回の症例については、現在病理結果待ちですが、いずれの結果であっても適用となるステロイドと、リンパ管の負担を抑える目的で低脂肪食による治療を開始しております。

今回の症例は、かなり高齢であり、軽度ながら心臓病も抱えておりました。麻酔リスクも健康な若い子と比べた場合よりも高くなりますが、この検査は、特に慢性腸炎とリンパ腫を鑑別するのに非常に重要な検査になります。その後の治療方針に関わるため、今回も内視鏡検査を実施することにしました。

高齢だからと言って、必ずしも麻酔下の検査が実施できないというわけではありません。

検査または治療するメリットと麻酔のリスクをよく検討し、その子にとって必要な検査であれば、極力実施するという方針で日々、診断および治療を施しております。

慢性腸症については、以前の佐藤先生のブログもご参照ください。

この情報が、同様な症状、病気を抱えるわんちゃんを救う一助をなれば幸いです。

獣医師 木村